サンドアニメーション 砂動日誌:19日
最終日。
この日も朝から絵コンテの描き直し。
いまは何とかなっているけど、最初は大変だった。
絵コンテといっても、ライブのサンドアニメーションと普通のアニメーションでは、映像の展開が違うし、それ以前に根本的な意味が違う。楽譜を見ながら演奏するように、瞬時に流れが掴めるものを作らなければならないのだから大変。
最初はどんな風につくればよいのか見当もつかなかったので、とりあえず普通の絵コンテのようなものを作ってみた。まず文章で書いた台本を元に、それらしいものを何枚か描いていると、何とかそれらしいものになってきた。
ようするに楽譜だな。演奏の手順とかテンポなどが時系列に並んでいて、全体の展開が見渡せればいいワケだね。
とはいってもまだまだ研究途中。いま解決できず困っているのは座標。
サンドアニメーションでは絵を描き始める場所がすごく大切になる。砂で形状のモーフィングを何度も繰り返して一つの絵を完成させていくので、キーになるポイントで、描かれているのが何の絵なのかを伝える特徴的な部分、目とか鼻とか、そういったものを描き始める場所を特定するのが難しい。
まず最初に中央の5センチ下からネコを描き始めて、次の絵は描いたネコのしっぽを利用して・・・と延々と展開していくので、描き始めの場所が違うと、進むに従ってだんだんとズレていって、しまいには二進も三進もいかず画面を消してゼロから描くという、みっともないことになってしまう。
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練習を重ねてゆけば、噺家が演目をこなすように自然と出来るようになるのだと思うけど、まだまだ入り口に立っている私には、そらで演じるのは無理。だからその日が来るまでは一度言葉に変換した図面のような、楽譜のようなものが必要なわけです。
とりあえず今回は、昨日と同じ失敗を回避するための楽譜を別紙にして、座標と時間がセパレートになった楽譜にしてみた。

それとこの日はもうひとつ課題がある。
昨日、失敗から脱することが出来ず、最後までもたついてしまった原因は黒ねこ。
もともと猫は、輪郭で描いた白い猫の予定だったのだけど、広い面積のコントラストで画面にメリハリを持たせたかったので、本番前日に白猫を黒猫に変更した。静止画面は想像通りよくなったのけど、実際に動かし始めると、処理する砂の量が何倍にも増えて大変。手間も増え、失敗も増え、技術的にも難しくなるので何とかせねば。

そこで、今回は全体に渡り最小限の砂で展開するための工夫。まずはシナリオの変更。大量に砂を使う場面の後に、砂を大きく動かすシーンを追加して段階的に砂を減らしていくような工夫。中盤、富士山〜新幹線〜怪獣、の流れは、新幹線〜怪獣の間に化石のシーンを追加。ここで二段階に分けて序々に砂を減らしていこう、というような作戦。
さらに今までは、黒猫を真っ黒に見えるようになるまで砂を盛り上げていたので、それを成りゆきまかせのグレートーンの柄猫に変更してみた。
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2時すぎには絵コンテというか絵譜というかの最終版が完成。
そして本番までの残り時間でリハーサル。
まずは小さな猫を描く練習。砂だけて2センチほどの猫を描くシーンが2回あって、どちら流れ的に重要なポイントなので、ここでトチると失敗感が増大するので徹底的に練習。しかし何度描いてみても、残念なことに練習中は失敗しない。やっぱり緊張するからいけないんだよなぁ、と思うがそればばかりは場慣れするしか手がないので、どうにもお手上げ。いまひたすらトチらない練習あるのみ。そして最後まで通してのリハーサルを2回。これもいい出来。録画しておいて本番中はビデオを流そうかと思うほど。

そして本番。大入り満員の客席にほっとしながらも緊張します。
これで最後かと思うと、今度こそパーフェクトなステージを!と妙に意気込んじゃってなおさら緊張の悪循環がスタート。坂本くんの尺八演奏が始まり、タイミングを見計らって砂台に照明を入れる。これも今回初の試み。砂台の下に仕込んだライトは調光式になっているので、昨日まではボワーンと灯りが広がっていくように照らすところからスタートしていたのだけど、今回は、スイッチオン!な感じでいきなり照らす。するとカメラのオートフォーカスが一瞬戸惑い、ピントを探してボワボワッと揺れる。これが何ともいい案配に収まるんですね。
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そしてスタート。あらかじめスタート用に用意しておいた猫の絵に砂をかけて散らし、画面中央下に手を置いて、人差し指の先端から第二関節分の位置に線を入れてオモチャ箱の描画を開始。
オモチャ箱の左側の幅は親指一本分。右手を左端にもどしてパッと広げて薬指先端までの19センチの見当をつけてオモチャ箱の右側を描画。
おもちゃ箱の大きさがなぜ19センチなのかというと、この後に出てくる車のオモチャのタイヤの大きさからの算出。タイヤは、描いた時に観客が「ああ、車か!」と判別するキーになるので、出来るだけ素早くササッと描きたいところ。それが確実に出来るサイズから逆算するとオモチャ箱は19センチがちょうどいいのです。しかし今になって考えてみると、車から描き始めて、つぎに箱、つぎにロボット。のほうがよかったような気もするんですが・・・。

といった感じで、頭の中は意外な数学モードでカラカラと回転を始めます。出足がいい時はこのまま数学モードを維持できるのですが、ミスが増えてくると、混乱して子供の砂遊び状態に突入しちゃってメッチャクチャ。前日の夕方はそんな感じだったな。
長くなるので実況中継はこのへんでおしまい。
そして今回はフィニッシュまでほぼ安定した数学状態を維持して、この3日間で一番の出来でした。最後に魚の絵を描いて、サインを入れて、兵隊さんを描くのを忘れて、アレ?な感じでしたが無事終了。
恐ろしいほど充実した一週間がこれで終結したのでした。
拍手の中で、燃え尽きた脱力感と、新たに漲るアイデアがほとばしり「か・い・か・んっ」と言いたい気持をぐっと抑えたのでした。
そして今、目の前には、大きな夢と野望。へへへっ。
砂動日誌はまだまだ続きます。砂童だっけかな?
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by hikosukea | 2010-12-29 11:45 | ●舞台ライブの仕事
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