串カツ
 さんざん食べ物のイラストを描いておいて、いまさら何なんですけど、やっぱ食べ物はイラストより写真ですね。だけど不思議と、食べてる姿はイラストのほうがいい感じのような気がします。写真だと何となく生々しすぎて、美味しそうじゃない。いやいや、やっぱり写真もイマイチです。映像にはかなわないです。特にドラマのワンシーンなんかは良いです。夏の昼下がり、エアコンの効いた喫茶店で、白いジャケットを着た宍戸ジョーが、コーヒーを飲みつつナポリタンなんかチュルチュルッと食べてたら、すぐマネしたくなりますね。
 いやいやいや、映像じゃなくても、小説なんかもいいですね。むかし読んだ内田百閒の小説で、ある男が、川っぺりにあるヨシズ掛けの食堂で川の流れを眺めながら「ヒマだからカツでも噛むかな」っていうような下りがあるんです。もう20年以上前に読んだの記憶なんで全然違うかもしれないんですが、でもだいたいそんな話しです。この下りを読んだときはビビッときましたね。「ヒマだからカツでも噛むかな」なんて並みの人間には言えないです。
 細かいことを言えば、どういうシチュエーションなのかもよく分からない。ハムカツなのか串カツなのかトンカツなのかチキンカツなのか、噛むだけなのか、食べるのか。当時は堅い物を食べるときは「噛む」表現するものだったのか。ま、いろいろ想像しているうちに、わたしは無性に串カツが食べたくなって、バイクをぶっ飛ばしてスーパーに行き、お惣菜コーナーで串カツを買いました。それからまたバイクをぶっ飛ばして玉川上水のひんやりとした木陰のベンチで静かに串カツを噛んでみました。自分でも何してるか分からなかったと思います。とにかくひたすら、何でもぶっ飛ばすのは青春ですからね。「カツを噛む」という異様に静止度の高いイベントがアバンギャルドに感じたんでしょうね。でもそのときの串カツは、あまり美味しくなかった気がします。
 なんか後ろ向きな話しになっちゃいましたけど、よーするに食べ物の感覚的な表現は、適度な時間経過の中にポンと置きざりにすることでリアルに伝わるんだろうな。そう思うわけです。
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「くしかつ君と玉川上水」2009.4.23:彦すけあ 写真にPhotoShopで加筆 camera/coopix990
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by hikosukea | 2009-04-23 13:41 | ●オブジェ・イラストなど
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