もりわじん
いまさら云わずと知れた「もりわじん」ですが、知らないない人のためにちょっとだけ説明します。
「もりわじん」というのは人の名前。
伝統的な招き猫を、独特な解釈とインスピレーションで造形する不思議な売れっ子作家。
招き猫以外にも、たくさんの作品をつくってますが、ここでは紹介しきれないので興味のある人は、わじんさんのHPをごらんください。9月18〜29日伊勢神宮内の、おかげ横丁で開催される「来る福招き猫まつり」にも出展しています。「来る福招き猫まつり」と「もりわじん」は雑誌memo男の部屋10月号でも紹介されています。

●写真上は、わじんさんの作品と、わじんさんの自宅の庭を立体視用に合成したもの。
●写真中央は、わじん作品の特徴的な猫の顔。かわいいけど拝みたくなってしまうような不思議な表情。
●写真下は、わじんさんの自慢、庭にある池。庭も池も自作です、だからこれも作品ですが残念ながら展覧会では見られません。
(立体視は平行法でごらんください)
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●わじんさんちのトマト

わじんさんは、湖の近くの少し高台になったところで、美しい奥さんと、かわいい猫と共に暮している。
夏でも空気の中にヒンヤリとした森林の香りがしてエアコンなんか必要なさそうなところだ。
広いアトリエと広い庭がある。
庭は一年がかりで手を入れて立派な庭園になっている。庭木はフルーツや野菜がほとんど。池もある。庭全体はゆるやかに傾斜していて、そこにポコリポコリと小さな起伏がある。
新興都市などで高低差3メートルくらいに土地を盛り上げてつくった漫然とした公園をよく見かけるが、この庭はそれをギュッと圧縮。まのびした土地を絞り落とした後、ビタミンたっぷりの空きスペースにツンツンツンと野菜や果物を植えたような庭なのだ。
その庭を七匹の猫が駆け回り、ところどころに、わじんさんの作品が置かれている。
わじんさんの案内で庭を歩いていると、土の養分をたっぷりと吸い上げてタプンタプンになった大きめのミニトマトが、まるでデラウエアのように、ぎっしりとかたまって実っていた。
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「これ、もう食い頃だな」と言って一つもぎ取ると、わじんさんはモグモグと食べてしまった。
「うまいうまい、ひこさんも食べていいよ、好きなだけ食べて、いっぱいあるから」そんなことを言うのでわたしもパクパクモグモグしてみた。甘くて冷たくてとても美味しい。「んん〜、これすご〜く美味しいなぁ、んんん〜すご〜く美味しいからもう一つ食べちゃお」モグモグ。
わじんさんは庭木の育ち具合を確かめるように、ゆっくりとあたりを見回しながら、アトリエにもどっていった。

わたしはもう少し庭を歩いてみることにした。
広いといっても庭だ。外周をぐるりと歩くとゆっくり歩いても3分くらいでトマトの前に戻ってしまう。夏だし喉も乾くし目の前にトマトはあるし。ぱくぱくぱくぱく。すきなだけ食べてと許可も下りているし。ぱくぱくぱく。
庭を十周くらい廻ったころ陽が落ちて、あたりが暗くなってきた。
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アトリエから庭に向かって広いデッキが付き出している。
奥さんも交え、そこでビールを呑みながら夕食をご馳走になった。食事は庭の野菜を主役にした、奥さんの手料理だ。
ビールと料理をゴクゴクパクパクしながら、庭の池を作った時の話しや、猫の話しなどをした。
料理には庭のトマトが使われていたが三人で摘んでいるのであっという間になくなってしまう。
奥さんが「もうすこしトマト摘んできましょうか?」と言うのを待って、わたしはトマト補給係になりたい、と志願した。庭といってもアウトドアの一部なので女性一人で夜の一人歩きは危険なのだ。
まず一つ味見をしてから皿一杯になるまでトマトを摘む。皿に盛ったトマトが溢れ落ちないように、アウトドアの夜道をソロ〜リと進む。それでもいくつかはポロリ、ポロリと皿から落ちてしまう。落ちたものを拾ってまた皿にのせるのは気がひけるのでパクリ。またポロリまたパクリ。

帰り道、駅に向かうバスの車中で、日本の昔話しを思い出した。
沼にオノを落としたウソつきのキコリと正直もののキコリの話しだ。
お話の中で、ウソつきのキコリは沼の精霊に金のオノを落としたのだとウソを話し、精霊を怒らせてしまうが、正直者は鉄のオノをおとしたのだと正直に話し、褒美に金と銀のオノをもらうのだ。
わじんさんの家で、「トマト、おいしいので、た〜くさん食べてしまいました」と話したら、わじんさんは感心して、「んじゃぁ、おみやげに一包み持ってけよ」なんて言ってくれただろうか。
いやいや、それと昔話しでは話しが違うか。おいしいトマトの味の記憶と昔話しが、バスの揺れでシェイクされてワケの分からないことに考えついてしまったのか。気づくと夢の中だった。
夢の中で、わたしはわじんさんにトマトを一抱え持って返しにいった。するとわじんさんは、「ひこさんは正直者なんだね。んじゃ、褒美にこれをあげよう」といって壺をくれた。猫の形をした一抱えもある大きな壺だ。壺の中にはトマトがぎっしり入っている。
それを持ってバスに乗ろうとすると、壺が大きすぎてドアを通れない。トマトはポロポロと溢れ出すし、どうしようかと思っていると、通りがかりの老人が、「わしの持っている山一つと、その猫壺を交換してくれないかのぅ」と話しを持ちかけてきた。ええええ、っと小躍りしながら驚いていると、現実のバスが駅に到着して目が覚めた。ビールの軽い酔いも覚めた。

この後さらに自宅まで鉄道で90分。
昔話しとお土産について、お土産と郊外の暮らしなどについて、はたまたトマトの恩返し、猫しべ長者、と妄想ぎみの思いつきをノートに書きとめた。
書きとめながら、美しくてうらやましい庭と、美味しいトマトと美味しい手料理と、最後にいいアイデアまでもらったことを考えると、頭もお腹も満腹の一日だったと思うのだ。
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by HIKOSUKEa | 2004-08-28 13:08 | ●Life Shot !
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